ボーナスで新NISAの成長投資枠を埋めるべき?年240万円「使い切りチケット」の考え方

ボーナスが入ると、投資クラスタのSNSで必ず見かけるのが「成長投資枠、年内に埋め切りました!」という投稿ですよね。あれを見て「え、私も埋めないと出遅れる?」と、そわそわしていませんか。

先に結論を言いますね。成長投資枠は「埋めると得」だけど、「埋めること自体が目的」になると危ない。ここを取り違えると、せっかくのボーナスがしんどい投資に変わってしまいます。この記事では、そもそも枠を埋めるってどういうことか、ボーナスで埋めるなら何に気をつけるかを、初心者向けにやさしく整理しますよ。配分の話(3つの財布の分け方)や、一括か分割かの話(分割一括のやり方)は別記事にゆずって、ここでは「枠」そのものに集中します。

「成長投資枠を埋める」って、そもそもどういうこと?

新NISAには2つの枠があります。まずは全体像を、お財布の中の「2つの仕切り」としてつかんでおきましょう。

枠の種類年間で使える額主な役割
つみたて投資枠120万円毎月コツコツの積立向き
成長投資枠240万円個別株・ETFやスポット購入向き
合計年360万円2つの枠の合算

「成長投資枠を埋める」というのは、この年240万円の枠を、その年のうちに使い切るという意味です。240万円ぶんの商品を買えば、その年の成長投資枠は満タン、というわけですね。

ちなみに生涯で非課税にできる合計は1,800万円まで。ただし、成長投資枠だけで使えるのは最大1,200万円までと決まっています。残りの600万円はつみたて投資枠を使わないと埋まりません。「成長投資枠だけで1,800万円ぜんぶ埋める」はできない、と覚えておいてください。

年240万円の枠は「使い切りチケット」、埋めるメリットの正体

成長投資枠のいちばん大事な性質は、その年の枠は、使わなかったぶんが来年に繰り越せないことです。まるで毎年配られる使い切りの回数券のようなもので、今年ぶんを使わないまま年を越すと、その回数券は静かに消えてしまいます。

だから「埋めると得」と言われるのは、主に2つの理由からですよ。1つ目は、非課税で運用できる時間が長くなること。早く枠に入れたお金ほど、非課税のまま複利で雪だるまを大きくする期間が長くなります。2つ目は、今年の枠は今年しか使えないから。余裕資金があるのに枠を余らせるのは、期限切れで回数券を捨てるようなものなんですね。

実際、まとまったお金を年初にドンと入れる「年初一括」は、毎月に分けるより統計的には約7割の確率で有利だったという調査(バンガード社)もあります。市場にお金を置く時間が長いほど有利になりやすい、というのはこの回数券の話とつながっていますよ。

ただし勘違いしやすいのが、「早く埋めた=勝ち」ではないという点です。回数券をあわてて全部使い切っても、買った商品が値下がりすれば含み損はふつうに出ます。非課税のメリットは「利益が出たとき」に効くもので、枠を埋めること自体が利益を約束してくれるわけではありません。ここを冷静に分けて考えると、次の落とし穴を避けやすくなりますよ。

でも「埋めること」がゴールになると、話が逆になる

ここからが本題です。枠を埋めるメリットは本物ですが、「枠を埋める」を目的にしてしまうと、順番がひっくり返って危険なんですよ。

よくある失敗が、「今年の240万枠がもったいないから」と、生活防衛資金(生活費の3〜6か月分)まで投資に回してしまうパターンです。これは、雨の日の傘を売り払って回数券を買い足すようなもの。枠は埋まっても、急な出費が来たときに、値下がりしたタイミングで泣く泣く売るハメになります。

じつは私も新NISAが始まった年、「初年度から満額埋めた人は偉い」という空気に押されて、ボーナスをほぼ全額つっこんだことがあります。その直後に相場が数か月もたついて、しかも予定外の医療費が重なり、含み損の状態で一部を売るしかありませんでした。枠は立派に埋まっていたのに、手元は火の車。あのとき痛感したのは、「枠を埋めた」という達成感は、生活の余裕とはまったく別物だということでした。

枠には「今年使わないと消える」という締め切りがありますが、あなたの人生の資金繰りには締め切りがありません。埋められる年に埋めればいいだけです。だからこそ、投資に回す額はまず配分で決めます。ここはボーナスをどう分けるかの記事で「守る・使う・増やす」の3つの財布に分けて考えます。枠の話は、その「増やす」お金が決まったあとの話だと覚えておいてくださいね。

ボーナスと成長投資枠は、じつは相性がいい

とはいえ、余剰資金がきちんとある人にとって、ボーナスと成長投資枠の組み合わせは相性バツグンです。理由はシンプルで、成長投資枠はまとまった資金でのスポット購入(好きなタイミングで一括買い)ができるからですよ。

毎月の給料からはつみたて投資枠でコツコツ積み立て、年2回のボーナスのときだけ成長投資枠でスポット買い足し。この二段構えが、会社員にとってムリのない王道パターンです。何を買うか迷ったら、成長投資枠で買うETF5本の選び方もあわせてどうぞ。

つみたて枠と成長枠、初心者はどっちを先に埋める?

「両方の枠があるなら、どっちから使えばいいの?」これは本当によく聞かれます。結論、初心者はまずつみたて投資枠からで大丈夫ですよ。

タイプ優先する枠理由
投資デビューしたばかりつみたて投資枠対象商品が金融庁お墨付きの長期向けに絞られ、選びやすい
積立に慣れ、余剰資金もある成長投資枠を併用ボーナスでスポット買いを足せる
個別株やREITも買いたい成長投資枠個別株はつみたて枠では買えない

つみたて投資枠で買える商品は、成長投資枠でもほぼ買えます。だから初心者は「まずつみたて枠で王道のインデックス投資に慣れて、余裕が出たらボーナスで成長枠を足す」でじゅうぶんですね。ETF積立とNISAの基本から入ると、遠回りせずに済みますよ。

生涯枠1,800万円は「何年かけて」埋める?ペースの考え方

「毎年ムリして満額埋めなきゃ」と思うと苦しくなりますが、そもそも生涯枠1,800万円は急いで埋めるほど偉い、というものではありません。マラソンをスタート直後に全力ダッシュする必要がないのと同じですね。自分のペースで、何年かけて埋めるかをイメージしておくと、ボーナスの使い方も落ち着いて決められますよ。

毎年の投資ペース1,800万円を埋めるまで向いている人
年360万円(満額)約5年余剰資金がかなり潤沢な人
年180万円約10年ボーナス+毎月積立で無理なく
年120万円(月10万)約15年多くの会社員の現実的なペース

ほとんどの人にとっては、いちばん下の「月10万+ボーナスで少し上乗せ」で15年ほどかけて埋めるのが現実的です。今年ボーナスで成長枠をいくら使うかは、この長いペースの中の一部だと考えると、「満額埋めなきゃ」の焦りから解放されますよ。

埋めるなら一括?それとも分けて?

「よし、今年はボーナスで成長投資枠を厚めに使おう」と決めたとします。次に迷うのが、240万円ぶんを一気に入れるか、何回かに分けるかですよね。

じつはここは、枠の話というより「入れ方(タイミング)」の話になります。統計では一括が有利になりやすい一方、初心者は高値づかみの不安で動けなくなりがちです。だから現実解は数回に分ける「分割一括」です。この見極めは一括か分割かをくわしく解説した記事にまとめてあるので、入れ方で迷ったらそちらを読んでくださいね。「どの枠を使うか」と「いつ入れるか」は別の問題だと切り分けると、頭がすっきりしますよ。

一度埋めても大丈夫。売れば枠は「翌年」戻ってくる

「枠を埋めちゃったら、もう二度と使えないの?」と心配する人がいますが、大丈夫。新NISAには売却枠の復活という仕組みがあります。持っている商品を売ると、その枠が翌年にまた空くんですよ。まるで貸しロッカーのように、荷物を出せば、翌年また同じ大きさの棚が空くイメージですね。

ここで注意したいのが、復活する大きさは「売った値段」ではなく「買った値段(取得価額)」だという点です。100万円で買ったものが120万円に値上がりして売っても、翌年に戻るのは100万円ぶんの枠。値上がりぶんは戻りません。さらに、枠が復活してもその年の年間枠(成長240万円)は超えられないので、そこもセットで覚えておきましょう。たとえば今年うっかり満額の240万円を使ったあと、急に現金が必要で一部を売ったとしても、その復活枠が使えるのは翌年以降。しかも翌年もらえる枠は240万円のままなので、「今年のうちにもう一度買い直す」はできません。この2点さえおさえておけば、枠のやりくりで慌てることはなくなりますよ。だから「埋めたら一生ロックされる」なんてことはなく、ライフイベントでお金が必要になれば、売って翌年また使えばいいだけですよ。

成長投資枠を埋める前のチェックリスト

  • 生活防衛資金(生活費3〜6か月分)は別に確保できている
  • 半年以内の大きな出費(旅行・引っ越し・家電)を投資に回していない
  • 「増やす」お金の額を配分で先に決めた(枠が目的になっていない)
  • 初心者ならまずつみたて投資枠から使っている
  • 入れ方(一括か分割か)を別で検討した
  • 成長投資枠だけの上限は生涯1,200万円だと理解している

全部チェックできたら、あなたのボーナスは「枠を埋めるための無理な投資」ではなく、「余裕資金を非課税で育てる投資」になっています。成長投資枠は逃げませんし、今年埋めきれなくても、来年また新しい回数券が配られますよ。まわりの「満額埋めた」報告に心をざわつかせる必要はありません。大事なのは枠の埋まり具合ではなく、あなたの生活がぐらつかないこと。あせらず、あなたの傘と財布に合ったペースで、長い15年マラソンを楽しんでいきましょうね。