NISAで損益通算できない理由と5つの対策

NISAの口座画面を開いたら、買ったときより10万円も下がっていた。「確定申告すれば税金で取り戻せるのかな」。私も最初、そう思いました。でも調べてみたら、NISAの損失は税金の計算に使えないんですよね。

これ、知らないまま放置すると数万円から数十万円の差になるときがあります。実は課税口座(特定口座)で同じ損失が出ていれば、税金を減らせたのに、NISAだとそれができない。このギャップを知っているかどうかで、口座の使い方がガラッと変わります。

ここでは、NISAで損益通算ができない仕組みと、具体的な対策を数字つきで整理しました。2027年の制度改正の影響もまとめています。

NISAの損失が「ないもの扱い」になる理由

損益通算とは、まるで家計簿のプラスとマイナスを相殺するようなものです。八百屋で5万円もうけて、魚屋で3万円損したら、トータル2万円の利益に対して税金がかかる。これが損益通算ですね。

ところがNISA口座は「非課税」という特別な箱に入っています。この箱には「中身は課税しません」という札が貼ってあるんです。課税しないということは、利益が出てもゼロ、損失が出てもゼロ。税務署から見ると「何も起きていない」のと同じなんですよね。

普通の課税口座なら「利益に20.315%の税金がかかる代わりに、損失も計算に入れてあげますよ」という取引が成り立ちます。でもNISA口座は最初から税金ゼロの約束をしているので、損失を計算に入れる理由がないわけです。

知っておこう 国税庁のタックスアンサー(No.1535)でも「NISA口座で生じた損失は、他の口座の利益との損益通算はできません」と明記されています。繰越控除(損失を翌年以降に持ち越す制度)もNISAでは使えません。

だから「NISAで損したぶんを確定申告で取り戻す」は、残念ながらできません。利益が非課税になるメリットの裏側に、この落とし穴があります。

税額シミュレーション NISAと特定口座でどれだけ差が出る?

私がこの仕組みを知ったのは、実際に税額を計算してみたときでした。同じ「30万円の損失と50万円の利益」でも、口座の組み合わせで手元に残るお金がまるで違います。

パターン損失の口座利益の口座課税対象税金(20.315%)
A: NISAで損失NISA
-30万円
特定口座
+50万円
50万円約101,575円
B: 特定口座同士特定口座
-30万円
特定口座
+50万円
20万円約40,630円

パターンAとBの差額は約60,945円。ランチ代にすると150回分くらいですよ。NISAの損失が通算できないだけで、これだけ税金が変わるんですね。

もう少し大きな金額でも見てみましょう。NISA口座で100万円の損失、特定口座で200万円の利益が出たとします。NISAの損失は通算できないので、200万円まるごとに課税されて税金は約406,300円。もし両方が特定口座なら100万円に対する約203,150円で済みます。差額は約20万円。金額が大きくなるほど、この差はどんどん広がります。

注意 特定口座の損失は確定申告で最大3年間の繰越控除ができます。でもNISAの損失はこの繰越控除も使えません。毎年の確定申告で「損した分を来年に持ち越す」こと自体が不可能です。

NISAで損益通算できないときの5つの対策

仕組みが分かったところで、じゃあどうすればいいのか。私自身が口座の使い分けを見直したときの考え方を整理しますね。

1. 値動きが安定した商品をNISAに入れる

NISAはまるで「壊れにくい食器を入れる棚」のようなもの。落としても割れにくいもの、つまり全世界株式インデックスやバランスファンドのような低リスク商品を優先的に置きましょう。新NISAの生涯非課税枠は1,800万円(年間最大360万円)。この枠をインデックスファンドで埋めていくのが王道パターンです。

2. ハイリスク銘柄は特定口座で運用する

個別株やセクターETFなど値動きが大きいものは特定口座へ。万が一損失が出ても、他の利益と損益通算できます。私も以前、気になるテーマ型ETFをNISAで買おうとしたことがあります。でも「もし値下がりしたら損失が何にも使えない」と気づいて、特定口座に切り替えました。

3. 含み損ですぐ損切りしない

NISAは長期運用が前提の制度です。一時的な下落で慌てて売ると、非課税枠をムダに使ってしまいます。まるで、寒い冬に「このコートもう要らない」と捨ててしまうようなもの。春が来れば、また着られたかもしれないのに。過去のデータでは、全世界株式インデックスは15年以上保有すればマイナスになった期間がほとんどありません。

4. 特定口座の含み損をNISAで買い直す

特定口座で含み損がある銘柄を売却して損失を確定させ、同じ銘柄をNISA口座で買い直す方法があります。これで損失は特定口座側で損益通算に使えて、今後の値上がり益はNISAで非課税になります。

たとえば、特定口座で買った投資信託が50万円から40万円に下がっていたとします。これを売って10万円の損失を確定させ、NISA口座で40万円分を買い直す。損失10万円は特定口座の利益と通算に使えるし、ここから値上がりしたぶんはNISAで非課税。まるで引っ越しついでに税金を節約するようなイメージですね。

5. 配当金の受取方式を確認する

NISA口座で株式やETFの配当金を非課税にするには「株式数比例配分方式」にしておくことがいります。証券会社の口座設定画面で確認してみてください。「登録配当金受領口座方式」や「個別銘柄指定方式」になっていると、NISAで持っている銘柄でも配当金に20.315%の税金がかかってしまいます。

口座の使い分けフローチャート

どの口座に何を入れるか迷ったときは、こんなふうに考えてみてください。まるでクローゼットの整理と同じで、「よく使う服は手前に、季節ものは奥に」という感覚ですね。大切なのは「損が出たときに税金の計算に使えるかどうか」で口座を決めることです。

商品タイプおすすめ口座理由
全世界株式インデックスNISA(つみたて投資枠)長期で安定、損失リスク低い
S&P500インデックスNISA(つみたて投資枠)長期保有向き、非課税メリット大
高配当ETFNISA(成長投資枠)配当金が非課税になるメリットが大きい
個別株(成長株)特定口座値動き大、損失時に通算できる
レバレッジ型ETF特定口座ハイリスク、損益通算の保険が必要
セクターETF特定口座集中投資のリスクあり

2027年のNISA改正で何が変わる?

2027年1月から、NISAにいくつかの変更が入ります。損益通算ができない点は変わりませんが、使い勝手はよくなりますね。

非課税枠の年内復活。今まではNISAで売却しても、枠が戻るのは翌年でした。2027年からは売却した年内に取得価額ベースで枠が復活します。「失敗したから売って買い直す」がやりやすくなります。

こどもNISA新設。18歳未満の子ども向けに年間60万円、生涯600万円の非課税枠が新しくできます。親子合わせると非課税枠がかなり大きくなりますね。ただし、こどもNISAでも損益通算できない点は同じなので、商品選びは慎重に。

つみたて投資枠の対象商品拡充。債券を50%以上含むバランスファンドも対象になります。値動きがマイルドな商品をNISAで選びやすくなるので、「NISAで損失を出したくない」という人には追い風ですね。

知っておこう 損益通算ができないルール自体は2027年以降も変わりません。口座の使い分け戦略は引き続き重要です。詳しい制度情報は金融庁の公式サイトで確認できます。

よくある質問

NISAで損した分を確定申告で取り戻せますか?

取り戻せません。NISA口座の損失は税務上「存在しないもの」として扱われるため、確定申告をしても損益通算や繰越控除の対象になりません。国税庁のタックスアンサーNo.1535にも明記されています。

NISA口座と特定口座、両方持つべきですか?

はい、両方持つのがおすすめです。低リスクの長期投資はNISAで非課税メリットを活かし、値動きの大きい銘柄は特定口座で損益通算の保険をかける。この使い分けが税金対策の基本ですよ。iDeCoとNISAの比較も参考にしてみてくださいね。

NISAで含み損が出たらすぐ売るべきですか?

基本的にはすぐ売らないほうがいいです。NISAは長期運用向きの制度なので、一時的な下落で売ると非課税枠をムダにしてしまいます。ただし、投資先の根本的な問題(業績悪化、上場廃止リスクなど)があるときは売り時のサインを確認して判断しましょう。

特定口座の損失は何年繰り越せますか?

最大3年間です。ただし、繰越控除を使うには損失が出た年から毎年かかさず確定申告をする必要があります。1年でも申告を忘れると、繰り越しが途切れてしまうので注意してくださいね。確定申告の詳しいやり方も合わせてどうぞ。

NISA損益通算チェックリスト

  • NISAの損失は確定申告で取り戻せないことを理解した
  • 低リスク商品(インデックスファンド等)をNISA口座に優先配置している
  • ハイリスク銘柄は特定口座で運用している
  • 配当金の受取方式が「株式数比例配分方式」になっている
  • 特定口座の損失は繰越控除のために毎年確定申告する予定がある
  • 含み損で慌てて損切りせず、長期目線で保有判断している
  • 新NISA生涯非課税枠1,800万円の範囲で投資計画を立てている

まとめ

  • NISAの損失は税務上「ないもの」扱い。損益通算も繰越控除もできない
  • 同じ30万円の損失でも、口座の違いで税金が約6万円変わるときがある
  • 対策は「NISAに低リスク商品、特定口座にハイリスク商品」の使い分け
  • 2027年から非課税枠の年内復活など制度改善あり。ただし損益通算ルールは変わらない