配当控除 確定申告 完全ガイド 2026|総合課税・申告分離・税率早見表

この記事の要点

  • 配当金には3つの選択肢があります(申告不要・総合課税・申告分離課税)。最適解は人によって違います。
  • 配当控除は税額からダイレクトに差し引く「税額控除」。所得税で配当所得の10%(または5%)が戻ります。
  • 課税所得900万円超で配当部分に23%以上の累進税率が乗るため、目安はこのライン。1000万円超で控除率が半分に。
  • NISA口座の配当は非課税。普通の特定口座で源泉徴収されている方は、確定申告で取り戻せる可能性があります。

配当控除とは何ですか(例え話でイメージ)

配当控除とは、国内株式の配当金を「総合課税」で確定申告したときに、税金そのものから一定割合を直接差し引いてくれる仕組みです。たとえばお店の代金が1万円のとき、所得控除は「先に1,000円割引してから消費税をかけ直す」イメージなのに対し、配当控除は「最後の請求金額から1,000円を直接引いてくれる」割引券のような存在です。だから配当控除は税額控除と呼ばれ、節税の効果が大きいのが特徴です。

なぜこの控除があるかというと、配当金の元になった会社の利益にはすでに法人税がかかっており、それをさらに個人の所得税で課税すると二重課税になってしまうためです。その調整として、個人の税額から一部を取り戻せるようにしたのが配当控除のしくみです。

配当金の3つの課税方式 ざっくり比較

上場株式の配当金は、特定口座(源泉徴収あり)で受け取ると約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が天引きされます。ここからの選択肢は3つあります。

課税方式税率配当控除譲渡損失と通算
申告不要源泉20.315%で完結使えないできない
総合課税5〜45%の累進+住民税10%使えるできない
申告分離課税一律20.315%使えないできる(3年繰越も可)

配当全体について、いずれか1つの方式を選ぶ点に注意してください。「この銘柄は総合課税、別の銘柄は申告分離」といった使い分けはできません。

配当控除の控除率を整理(10%と5%)

配当控除の控除率は、所得の種類と課税総所得金額によって決まります。基本のルールはシンプルで、「国内株式の配当」は10%、「証券投資信託の収益分配金」は5%が出発点です。

課税総所得金額国内株式の配当証券投資信託(外貨建以外)
1,000万円以下所得税10%/住民税2.8%所得税5%/住民税1.4%
1,000万円超の部分所得税5%/住民税1.4%所得税2.5%/住民税0.7%

つまり、課税総所得が1,000万円を超えるとその超過部分の配当については控除率が半分に下がる、という二段構えになっています。外貨建ETFや海外REITは対象外、外国株式の配当も対象外です。J-REITも配当控除の対象になりませんので、勘違いしないように気をつけてください。

総合課税と申告分離課税 どちらが得?目安の早見表

「結局、私はどちらを選べばいいの?」という声が一番多いところです。結論からいうと、配当控除を効かせたあとの実効税率を計算すると、課税所得900万円ぐらいが分岐点になります。

課税所得所得税の限界税率配当控除後 所得税実効どちらが有利か(目安)
195万円以下5%0%(マイナスは0扱い)総合課税が圧倒的に有利
330万円以下10%0%総合課税が有利
695万円以下20%10%総合課税が有利
900万円以下23%13%ほぼ互角(要シミュレーション)
1,000万円超33%以上23%以上申告分離(または申告不要)が有利

住民税まで考えると、課税所得が900万円を超えるあたりで申告分離課税が逆転します。会社員の方は給与の源泉徴収票にある「課税給与所得金額」を確認したうえで、自分の階層を見極めてください。

計算例 課税所得500万円・配当40万円のケース

具体的な数字で見ていきましょう。給与の課税所得が500万円、上場株の配当が年40万円、特定口座(源泉徴収あり)で受け取っているとします。

  • 申告不要を選んだ場合:配当40万円 × 20.315% = 81,260円が天引きで完結。手取り318,740円。
  • 申告分離課税を選んだ場合:税率は同じ20.315%なので、結果は申告不要と同等。譲渡損失がない限りメリットなし。
  • 総合課税を選んだ場合:所得税は配当40万円が課税所得540万円の枠に乗ります。限界税率20%なら配当部分の所得税は8万円。ここから配当控除10%(4万円)を差し引くと、配当に対する所得税は4万円。住民税は配当40万円×10%=4万円から配当控除2.8%(11,200円)を引いて28,800円。合計68,800円。

つまり総合課税のほうが12,460円ほど有利になり、確定申告で還付されます。配当が大きい人ほど差が広がりますので、課税所得が低めの方は総合課税を必ず検討してください。

申告分離課税が向いている人 譲渡損失との通算

申告分離課税の最大のメリットは、上場株の譲渡損失と配当を相殺できる点です。たとえばA社の株で30万円の損失、配当が20万円ある場合、申告分離課税を選ぶと配当20万円から損失20万円を差し引いて課税対象が0円になります。すでに源泉徴収された約4万円の税金が確定申告で還ってくる計算です。

さらに、その年に通算しきれなかった損失は最大3年間繰り越せます(譲渡損失の繰越控除)。翌年以降の配当や売却益と相殺することで、長期的な節税につながります。「今年は損切りで終わったけれど、来年配当が増える予定」という方には大きな恩恵があります。

NISA口座の配当はどう扱われる?

新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)の中で受け取る配当金は、そもそも非課税です。確定申告の対象外であり、配当控除も損益通算の対象にもなりません。よって、NISA口座の配当は何もしなくて大丈夫です。

ただし重要なポイントが1つだけあります。配当金の受取方式を「株式数比例配分方式」にしていないと、NISA口座の配当でも特定口座の配当でも、配当金が銀行振込(登録配当金受領口座方式)になり、結果として源泉徴収されてしまう場合があります。証券会社のマイページから「株式数比例配分方式」を選択しておいてください。

確定申告 必要書類チェックリスト

  • □ 特定口座年間取引報告書(証券会社から交付・1月中旬以降にダウンロード可能)
  • □ 配当金計算書(年間取引報告書に集約されていれば不要)
  • □ 源泉徴収票(給与所得がある方)
  • □ マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
  • □ 還付金の受取口座情報(本人名義の銀行口座)
  • □ 各種控除証明書(生命保険・iDeCo・ふるさと納税など)

e-Taxを使うと年間取引報告書のXMLデータを取り込めるため、入力ミスを防げます。マイナンバーカードとスマホがあれば、税務署に行かずに自宅から完結できます。2026年の申告期間(2025年分)は2月16日から3月16日までです。

住民税の申告 2023年改正後はどうなった?

2022年分まで、配当の課税方式は所得税と住民税で別々に選べました。たとえば「所得税は総合課税、住民税は申告不要」とすることで、両方のおいしいところ取りができたのです。しかし2023年分(2024年申告)からこの仕組みは廃止され、所得税と住民税の課税方式は一致させなければならなくなりました。

その結果、総合課税を選ぶと住民税にも累進的な負担が乗るほか、国民健康保険料や保育料の判定にも配当所得が反映されます。とくに自営業の方や、扶養に入っている主婦・学生の方は、総合課税を選ぶと扶養から外れる場合がありますので慎重に検討してください。

初心者がやりがちな失敗 5選

  • 配当控除を知らずに源泉徴収のまま放置。課税所得330万円以下の方は、総合課税で確定申告するだけで毎年数万円が戻ってくることがあります。
  • 外国株の配当に配当控除を使おうとする。米国株や海外ETFの配当は配当控除の対象外です。代わりに外国税額控除を検討してください。
  • 譲渡損失を申告し忘れて翌年に活かせない。損失が出た年でも確定申告しておけば、3年間繰越して将来の配当や売却益と相殺できます。
  • 住民税の影響を見落とす。総合課税を選ぶと国民健康保険料が上がる、扶養から外れる、保育料が上がるなどの副作用があります。
  • NISAの配当受取方式を変更し忘れる。「株式数比例配分方式」にしていないと、NISAなのに源泉徴収される事故が起きます。証券会社の画面で必ず確認してください。

判断フロー 自分はどの方式を選ぶ?

  1. NISA口座の配当ですか?→はい、なら何もしなくてOK。
  2. 譲渡損失がありますか?→はい、なら申告分離課税で損益通算。
  3. 課税所得は695万円以下ですか?→はい、なら総合課税+配当控除がほぼ確実に有利。
  4. 課税所得は900万円以下ですか?→はい、なら両方を計算して有利な方を選択。
  5. 課税所得は1,000万円超ですか?→はい、なら申告不要または申告分離課税が基本。

このフローを年に1回チェックするだけで、あなたの配当受取の手取りが数万円〜数十万円単位で変わってきます。家計簿アプリや証券会社の年間取引報告書をベースに、毎年2月に1回点検する習慣をつけましょう。

シミュレーション 課税所得別の有利な選択

配当が年30万円のとき、課税所得別に手取り(所得税+住民税後)がどう変わるかを表にしてみました。配当30万円・特定口座源泉徴収あり・他に控除なしのシンプルなケースです。

課税所得申告不要総合課税差額
200万円239,055円261,600円+22,545円(総合が有利)
400万円239,055円252,600円+13,545円(総合が有利)
600万円239,055円243,600円+4,545円(総合が有利)
800万円239,055円234,600円−4,455円(申告不要が有利)
1,200万円239,055円204,600円−34,455円(申告不要が有利)

このようにおおむね課税所得700万円台の前半までが総合課税の出番です。住民税や社会保険料を含めるとさらに早く逆転するケースもあるため、シミュレーションは必ず両方のケースで計算してください。

まとめ

配当控除と確定申告は、最初は専門用語が多く感じられますが、ポイントは「自分の課税所得がどの階層か」と「譲渡損失があるかないか」の2つだけです。NISAなら何もしなくてOK、課税所得が低めなら総合課税で取り戻す、損失があるなら申告分離で通算する。この3パターンを覚えておけば、毎年の配当が確実に手取りベースで増えていきます。確定申告書等作成コーナーやe-Taxを使えば、自宅からスマホ1台で完結できますので、まずは特定口座年間取引報告書を取り寄せて、自分のケースで計算してみてください。