外国税額控除のやり方 完全ガイド 2026|米国株・ETF配当の二重課税10%を取り戻す確定申告5ステップ

「米国の高配当ETFを買ったのに、配当金の手取りが思ったより少ない…」と感じたことはありませんか?じつはその正体が二重課税です。米国でいちど税金を取られて、そのあと日本でもう一度取られているまるで同じケーキを2人に分けて食べられてしまうようなものですね。

でも安心してください。この取られすぎた分を取り戻せる仕組みが外国税額控除(がいこくぜいがくこうじょ)です。この記事では、二重課税の仕組みから、確定申告での取り戻し方、そして「自分は手続きが必要な人なのか」までを、やさしい例え話と比較表で2026年版として整理します。

この記事の要点まとめ

  • 米国株・米国ETFの配当は米国で10%+日本で20.315%の二重課税が起きる
  • 外国税額控除を使えば、米国で取られた10%の一部または全部を取り戻せる
  • 取り戻すには確定申告(総合課税か申告分離課税を選択)が必要
  • 国内籍ETF・投資信託は2020年から自動で調整され、手続き不要
  • NISA口座の配当は外国税額控除が使えない(10%は取り戻せない)

二重課税ってなに?米国株の配当が2回も税金を取られる仕組み

まずは敵の正体を知りましょう。あなたが米国の高配当ETF(たとえばVYMやSPYD)から配当金を受け取るとき、お金は次のような順番で「2回」税金を引かれます。

たとえるなら、海外旅行のおみやげに関税がかかって、家に帰ってからもう一度消費税を取られるようなイメージですね。同じ配当に対して、米国と日本という2つの国がそれぞれ手を伸ばしてくるのです。

順番どこで税率配当100ドルの場合
①最初米国で源泉徴収10%(日米租税条約)10ドル天引き → 残り90ドル
②次に日本で源泉徴収20.315%90ドルの20.315%=約18.3ドル天引き
結果手取り合計で約28%減100ドル → 手取り約71.7ドル

このように、本来なら日本の20.315%だけで済むはずが、米国の10%が上乗せされて約28%も引かれてしまいます。この「上乗せされた10%」をなんとか取り戻したいその願いをかなえるのが外国税額控除なのです。

日本の20.315%の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%です。「だいたい2割」とおぼえておけば大丈夫ですよ。

外国税額控除でどれくらい取り戻せるの?

外国税額控除とは、ひとことで言うと「外国で払った税金の分を、日本の税金から差し引いてくれる」制度です。米国で取られた10%を、日本で納める所得税から値引きしてもらえる、と考えるとわかりやすいですね。

ただし、ここで大切な注意点があります。「払った10%が必ず全額もどってくるわけではない」ということです。あなたの年間の所得や所得税額によって、取り戻せる上限(控除限度額)が決まっているからです。次の章でくわしく見ていきましょう。

【最重要】自動で調整される人・確定申告が必要な人の違い

じつはここが、多くの人が勘違いしているいちばん大切なポイントです。同じ「高配当ETF」でも、買った商品によって手続きがまったく違うのです。

2020年1月の税制改正で、国内籍のETFや投資信託については、二重課税を自動で調整してくれる仕組み(二重課税調整制度)がスタートしました。つまり、あなたが何もしなくても、分配金が支払われる時点ですでに調整済みなのです。便利ですね。

一方で、あなたが米国の証券取引所に上場しているETF(VYM・VOO・SPYDなど)や米国株を直接保有している場合は、この自動調整の対象外です。自分で確定申告をして外国税額控除を申請しないと、10%は取られっぱなしになってしまいます。

保有している商品具体例二重課税の調整あなたの手続き
国内籍ETF(東証上場)1489・1577・2564 など外国株を含むものは対象、純日本株ETFは外国税なし2020年から自動調整不要(手続きいらず)
国内籍の投資信託オルカン・S&P500投信 など分配金が出れば自動調整不要
米国籍ETF(米国上場)VYM・HDV・SPYD・VOO・VTI・QQQ自動調整なし確定申告で外国税額控除
米国株(個別株)アップル・コカコーラ など自動調整なし確定申告で外国税額控除

「投資信託だと分配金を出さないタイプ(無分配・再投資型)」の場合は、そもそも分配金が出ないので二重課税調整も発生しません。オルカンやS&P500の人気インデックス投信の多くがこのタイプなので、「自分は何も引かれていないはず」と覚えておくと混乱しませんよ。

つまり、外国税額控除の確定申告を考える必要があるのは、おもに「米国ETFや米国株を、課税口座(特定口座・一般口座)で直接持っている人」ということになります。米国版と日本版の高配当ETFの違いについては、米国高配当ETF VYM・HDV・SPYD 比較日本の高配当ETF 1489・1577・2564 比較もあわせて読むと、使い分けのイメージがつかみやすくなりますよ。

控除限度額の計算方法をやさしく解説

「じゃあ10%は全部もどるの?」という疑問にお答えします。残念ながら、もどる金額には上限があります。その上限を控除限度額といい、次の計算式で決まります。

所得税の控除限度額 = その年の所得税額 ×(その年の国外所得金額 ÷ その年の所得総額)

むずかしく見えますが、考え方はシンプルです。「あなたの所得全体のうち、海外からの所得が占める割合」を出して、その割合分だけ日本の所得税から差し引いてあげますよ、という仕組みなのです。たとえばクラスの掃除当番を「教室を使った割合に応じて分担する」ような、公平な考え方ですね。

具体例で見てみましょう。

項目Aさんの例
その年の所得税額20万円
所得総額400万円
国外所得(米国配当など)20万円
控除限度額の計算20万円 ×(20万円 ÷ 400万円)=1万円
米国で払った税(10%)が8,000円なら限度額1万円の範囲内 → 全額の8,000円が控除対象

このように、多くの個人投資家のケースでは、米国で払った10%は控除限度額の範囲内におさまり、ほぼ全額を取り戻せることが多いですよ。住民税からも別枠で控除されるため、所得税だけで取り戻せなくても、住民税側で調整される仕組みになっています。

NISA口座では外国税額控除は使えない

ここはとても大切なので、しっかり押さえてください。NISA口座で米国株・米国ETFを持っている場合、外国税額控除は使えません。

理由はシンプルです。NISA口座はそもそも日本の税金(20.315%)が非課税ですよね。外国税額控除は「日本で払う税金から差し引く」制度なので、差し引く相手の日本の税金がゼロのNISAでは、差し引きようがないのです。財布の中身がゼロの人からはおつりが出せない、というのと同じですね。

NISA口座で米国ETFを持つと、日本の20.315%は非課税でうれしいのですが、米国の10%だけはしっかり源泉徴収され、取り戻せません。つまり実質の配当利回りは「表面利回り×0.9」で考えておくのが安全です。

だからこそ、外国税のかからない日本版の高配当ETF(1489・1577・2564など)をNISAで持つという選び方が、最近は人気を集めています。日本版なら米国源泉徴収10%がそもそも発生しないので、NISAの非課税メリットをまるごと受け取れるからですね。NISA枠の使い方はNISA 損益通算の記事もヒントになりますよ。

外国税額控除の確定申告 5ステップ

では、実際に課税口座の米国ETF配当について外国税額控除を申請する手順を見ていきましょう。むずかしそうに見えますが、必要な書類さえそろえば、スマホやパソコンで一気に進められますよ。

  • ステップ1:年間取引報告書を用意する 証券会社のサイトからダウンロード。配当金額と米国で引かれた外国税額(10%分)が書かれています。
  • ステップ2:課税方式を決める 配当を「総合課税」か「申告分離課税」のどちらで申告するかを選びます(次章で解説)。
  • ステップ3:確定申告書を作成する 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、配当所得を入力します。
  • ステップ4:外国税額控除に関する明細書を作る 米国で払った外国所得税の額を記入。作成コーナーなら画面の案内に沿って入力するだけです。
  • ステップ5:提出する e-Tax(マイナンバーカード)または郵送・税務署持参で提出。還付があれば後日、指定口座に振り込まれます。

2026年分(2026年中に受け取った配当)の確定申告期間は、2027年2月16日〜3月16日が目安です。還付申告は期間前でも提出でき、5年さかのぼって申告することも可能ですよ。

総合課税と申告分離課税、どっちを選ぶ?

ステップ2で出てきた「課税方式の選択」は、取り戻せる金額に影響する大事な分かれ道です。それぞれの特徴を比べてみましょう。

項目総合課税申告分離課税
税率累進税率(5〜45%)+住民税一律20.315%
配当控除使える(国内株のみ)使えない
外国税額控除使える使える
損益通算できない譲渡損失と通算できる
向いている人所得が低めの人(課税所得330万円以下が目安)所得が高めの人・売却損がある人

ざっくり言うと、所得が低めの人は総合課税所得が高めの人や株の売却損がある人は申告分離課税が有利になりやすいです。ただし米国ETFの分配金は配当控除の対象外(国内株の配当のみ対象)なので、米国ETF中心の人は申告分離課税を選ぶケースが多いですよ。配当の申告の基礎は配当控除 確定申告の記事もあわせてどうぞ。

3年間の繰越控除という救済ルール

「控除限度額が小さくて、米国で払った税を取り戻しきれなかった…」というときも、あきらめなくて大丈夫です。控除しきれなかった分は、翌年から3年間くりこせる救済ルールがあります。

逆に、控除限度額に余裕があった年(使いきれなかった枠)も、同じく3年間くりこせます。お弁当の食べきれなかったおかずを次の日に持ちこせる、というイメージですね。年によって配当額や所得が変わる人にとっては、とてもありがたい仕組みです。

繰越をするには、控除しきれなかった年も毎年わすれずに確定申告を続ける必要があります。1年でも申告を抜かすと、その年の繰越枠は消えてしまうので注意しましょう。

外国税額控除でよくある失敗TOP5

最後に、初心者がやりがちな失敗をまとめておきます。同じ落とし穴にはまらないよう、チェックしてくださいね。

順位よくある失敗対策
1位NISA口座の配当で外国税額控除を申告しようとするNISAは対象外。10%は取り戻せないと割り切る
2位国内籍ETFなのに自分で申告してしまう(二重に調整)国内籍は自動調整済み。手続き不要
3位少額だからと申告せず放置する配当が年10万円以上なら申告を検討する価値あり
4位外国税額控除に関する明細書を添付し忘れる作成コーナーで案内どおり入力すれば添付漏れを防げる
5位繰越したいのに申告を毎年続けない配当がない年も連続して申告する

まとめ:取られすぎた10%は、ちゃんと取り戻せる

米国株・米国ETFの配当にかかる二重課税は、外国税額控除という制度を使えば、その多くを取り戻せます。最後にもう一度、大切なポイントを振り返りましょう。

  • 米国ETF・米国株を課税口座で持っている人 → 確定申告で外国税額控除を申請
  • 国内籍ETF・投資信託の人 → 自動調整なので手続き不要
  • NISA口座の人 → 残念ながら10%は取り戻せない(日本版ETFを検討)
  • 取り戻せなかった分は3年間くりこし可能

「むずかしそう」と敬遠していた外国税額控除も、仕組みがわかれば怖くありません。年に一度の確定申告で、あなたの大切な配当金をしっかり手元に残していきましょう。まずは自分が持っているETFが「国内籍」か「米国籍」かを確認するところから始めてみてくださいね。